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問:ペットショップからロシアンブルーの男の子(又は女の子)を迎えました。
つがいにするべきか、手術するべきか迷っています。

 以前からよくこういった質問のメールを頂きます。今回、この質問について色々な方面 から考えてみたいと思い、公開質問とさせて頂くことをメールを頂いた方に快く了承して頂きました。

 まず、自分が何故その子の子供を見たいのか、よく考えてみてください。理由には以下が考えられます。
 1.子猫を残せないのは可愛そう(又は避妊去勢するのが嫌)
 2.飼い主自身が飼っている子の子猫を見たい
 3.純血種なので子猫を生ませればお金になる(又は価値があるからもったいない)
 4.その他
(※その他に該当する方がもしいらっしゃいましたら理由を教えて頂けると嬉しいです。)

1について:手術せず自然にしておくのが一番だ、とおっしゃる方がたまにいらっしゃいます。ですが、飼育しているからには繁殖や生活・行動範囲を制限し、責任を持つ義務が飼い主にはあるのです。自分自身で責任を取れる範囲の繁殖なら許されると仰る方もいらっしゃるとは思いますが、単に可愛そうだという理由だけでお嫁さん(又はお婿さん)を迎えられることには反対です。
 一般的に、避妊去勢されない猫より手術された猫の方が平均寿命は長く、ストレスがかかりません。また、家族として飼う場合、雄を去勢せずにいると、スプレーという普通 の尿よりも数十倍臭い尿をかけてマーキングする可能性が高いです。雌の場合、発情しても避妊手術を受けなければ、雄と同じようにマーキングすることもあり、雄を求めての屋外脱出を試みたり、交配せずに放っておくとホルモンのバランスを崩すことも多々あります。避妊去勢しない現役の猫は、ペットとしては飼いにくいですし、飼い主にも猫にもストレスの多い状態だと思われます。
 後ほど繁殖の危険性については書きますが、繁殖は安易にしていいものではないと思います。

2について:この理由が一番多いように思います。確かに私も雑種の子を初めて飼育した時に、この子の子猫が見たいと思ったことがありましたから、飼い主がそういった気持ちになるのはよくわかります。ですが、このケースではロシアンブルーという猫種としてではなく、自分の愛おしい子供として考えて頂きたいと思います。その上で、生まれた子猫(平均3〜4頭、多ければそれ以上)全てを飼育できる自信と責任がなければ止めた方が良いでしょう。それに我が子のように思う子から授かった子を、自分が飼育できないからといって他人に譲るのは、この場合無責任なことだと思います。

3について:猫の繁殖で利益を得ようとするのは無謀で非人間的な考えではないでしょうか。ペット先進国のアメリカでは単に子猫を数多く繁殖したり、単にペットで売るために繁殖する人のことをキツンミル(Kitten-mill・子猫工場)やファーム(Farm・牧場)と呼び、本来の育種を目的とするブリーダーとは区別 され、蔑視されています。
 また、得られる利益に関してですが、誠実に繁殖をすれば驚くほどのお金がかかり、得られるお金は経費の半額にも到底及びません。利益を得るために1頭の雌に短い間隔で何度も子猫を生ませたり、一度にたくさんの一胎子を抱え、生まれた子猫を業者に卸したりするような機械的で非人道的な繁殖に不幸にも猫が使われた場合、猫も子猫も大きな危険に晒されていることになります。そしてそのような繁殖はロシアンブルーを愛するブリーダー達にとって甚だ迷惑で悲しいことです。
 単につがいで飼育するケースでも、猫種の向上を目的としない繁殖は、ロシアンブルー全体のクオリティを下げる残念な繁殖だと思います。

 実際にペットショップの猫に子猫を生ませる場合、数々の問題があります。
A.ショップで売られている殆どの猫が、繁殖に適したスタンダードに近いロシアンブルーの外見からかけ離れていること。
B.血統書がついていても、殆どが日本独自のクラブのものであり、信頼性に欠けるケースが多く見られる。
C.両親猫を見られることは殆どなく、遺伝や気質・体質に関しての正確な情報を得られない。
D.所有者が繁殖初心者の場合、先達ブリーダーに適切な助言を得られない。


Aについて:残念なことですが、ショップにいる大抵の子猫たちはペットタイプで、本来のロシアンブルーとかけ離れた外見の子が多く、繁殖するには適さないと思います。猫種には理想像(スタンダード)が規定されており、きちんと育種をしているブリーダーはそれをよく勉強して近づける努力をしているのですが、ペットショップに並ぶ子猫たちについては、前述したようにそういったことを考慮しているようには思えません。
 もちろんこれは繁殖に適した猫としての評価であって、ショップで購入された猫を全否定している訳ではありません。ご家庭の家族として、どの子も掛け替えがない命であり、金銭的価値に換算することはできないと思っています。
 ですから、価値があるから繁殖するといったお考えをお持ちの方には、それをよく考えて頂きたいと思います。金銭的価値を惜しんでの繁殖は、その猫種にダメージを与えるからです。
 日本のようにビジネスでペットの流通が多い国では、猫種としての魅力から外れた猫たちがどんどん増えますから、愛情も手間も時間もお金もかけて頑張っている真面 目なブリーダー達を結果的に苦しめています。

Bについて:ショップで売られている猫の血統書の殆どが、国内独自のクラブのもので、CFAなどの登録協会が発行する登録書を得られるケースは希です。そして時には信頼性に欠けることがあります。きちんとした血統書もあるかも知れませんが、流通 の問題上、子猫の血統書が取り違えられたり、間違った登録をされていたりすることは多々あります。
 繁殖する際にはその子の血統書の正確さや信頼性が大切です。何故なら、組み合わせる相手があまりにも近かったりしたら、子猫に大変な危険が及ぶからです。
 また、私が見た多くのショップのロシアンブルーの血統書には、かなり濃いインブリード(近親交配・兄弟姉妹や親子同士など)が見られました。

Cについて:猫を繁殖する場合、両親猫に遺伝的な問題がないかどうか、気質はどうか、出産の時のトラブルや病歴・体質などをよく知り、中度〜重度の問題がないことを確かめる必要があります。軽度の問題についてはその猫のブリーダーに正確な情報を教えてもらい、問題意識をもって取り組む姿勢が大切です。
 ですが、ショップの猫の場合はそのような情報が殆ど得られません。なのでその猫を繁殖する場合は多くの未知の危険性があり、生まれてくる子猫を予測することが困難です。生活に関わる重大な遺伝的疾患を持った子猫が生まれるかも知れないということも考慮しなければならないでしょう。

Dについて:もし繁殖について初心者だった場合、助言をしてくれるブリーダーが周囲にいないことはとても困難な状況です。経験と知識あるブリーダーは、交配や出産に関して新しいブリーダーに適切な助言をするでしょうが、ショップの猫ではそれを得ることは難しく思います。


 人間にとってもそうですが、猫にとっても出産はとても大変なもので、どんなに健康な猫でも100%の安全はあり得ません。子猫を得るためには常にリスクを伴います。リスクを最小限にするために、育種を心がけるブリーダーはその猫の血統や体質、出産時の適切な対応と知識、そして常日頃から猫について勉強することが求められます。

 以上のことから、ペットショップで売られている猫で繁殖をすることはお勧めできません。
 ショップで売られているのは家庭で飼育するための猫で、繁殖に供する猫ではないことを、一般 の方々が理解して下さることを切に願います。
 そして、安易な繁殖がこれ以上されないことを、私は心から祈っております。

2003/12/2 by Snow-Island